映画「汚れた心」を観た。
第二次世界大戦直後のブラジル日系人社会での出来事が描かれている。
日本の敗戦を受け容れた日系移民に対して、その彼らを「汚れた心をもつ國賊」と呼んで粛清した日系移民、という構図。前者は「負け組」、後者は「勝ち組」と通称されている。
勝ち組に加担した主人公を伊原剛志が、その妻を常盤貴子が演じた。
血生臭くて、重い。
しかし、この映画をより多くの人に観てもらいたいというのが率直なところだ。
※原作本表紙。ポルトガル語よめるようになりたい。
日本で日系移民に関してなぜこんなに知られていないのか甚だ疑問に感じる。
中学高校の歴史で習うのだって、第一次大戦後のアメリカ合衆国カリフォルニア州の移民法成立辺りの話が関の山だ。
日本(のどの地域)からどこの国へどれだけの人々が移民として船出したのか、そうした事実やその背景とどう向き合うか。
移民という歴史的に稀な出来事が日本からどのように展開されたのか知るだけでも、日本の歩みに対する大きな示唆を得られるのではないかとさえ感じる。(僕が授業中に寝てただけだったら、ごめんなさい。)
それとも、日本を出ていった人たちに日本法は及ばないから、特別に注意関心を払う必要はないというような政治的合意があるのだろうか。
百歩譲って、優先順位的に上位には上がらないという判断があるのだとしても、国家として誰かが向き合うべき問題だと思われる。
僕がサンパウロで見てきた「日本人 "japoneses"」像は、勤勉で礼儀を重んじ、あの広大な土地で豊かな農作物の生産に貢献してきたという点で尊敬されていた。(日本食の、あの繊細な味を分かってくれる人は少なかったけど。)
実際に日本人移民がブラジルに持ち込んだ農業技術・農作物の種類は、僕が知っているだけでもいくつもある。
であるにもかかわらず、ブラジル日系移民百周年の折に天皇陛下が行幸されたという形式的な応酬の他に、日本側から在伯日系移民への実質的な働きかけの類は見当たらない。
また、移民一世から世代を下るにつれ、彼らはますますブラジル化し、祖国のことを忘れていってしまっている。
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大学を休学して地球の裏側に行った数少ない人間だということで、単に僕が逆上せあがっているだけなのかもしれない。
それでも、日本を祖国と思っている人たちは、いまや決して日いづる国にのみ存在しているわけではない。(余談だが、デカセギとして日本に戻ってきている場合もある。)
そのことに思いを馳せると、そうした祖国を想う人々の存在が忘れられていってしまうことが残念に思われて仕方ない。
もう一度。ぜひ、この映画をご覧になってください。お願いします。